手つかずの広大な山林を自らの手で伐採、ユンボで整地し、山から切った間伐材でログハウスを建てる。そんな壮大な夢を実現しているのが植松リカさん。その原動力となっているのは、3人の子どもたちの存在です。「自然のなかで子どもたちを育てたい」。リカさんの素顔と奮闘ぶりをご紹介します。

美しい自然に恵まれた千葉・房総半島に1万坪の山林を購入、自らの手で切り開き、ログハウスを建て始めた植松リカさん。彼女がこの大きな挑戦に踏み出したきっかけは、“子どもたちを自然に触れさせながら育てたい”と願う親ゴコロでした。
リカさんは、11歳を筆頭に、5歳、4歳の3人の男の子をもつシングルマザー。独身時代はモデルとして活躍していましたが、結婚・出産を機にWebデザインの勉強を始め、現在は、Webデザイン会社をはじめ、子どもタレント事務所などを経営する女性起業家としても多忙な日々を送っています。
仕事に子育て……、普通ならその両立だけで毎日がいっぱいいっぱいになってしまうというのに、そのうえ、自らの手で山を開拓してログハウス作りとは!!
そうまでしても子どもたちのために“自然”にこだわる背景には、リカさん自身の経験に基づく子育ての哲学がありました。
モデルという経歴からもわかるとおり、女性らしい美しい外見が印象的なリカさんですが、実は、16歳からバイクのロードレースをはじめ、上位入賞も果たした強者。アウトドアも大好きで、キャンプ場として整備された場所ではなく、人が来ないような野山にテントを張ったキャンプもしょっ中していたいう女性でした。
「今、学校では“知識だけではなく、考える力を養う”って言っていますけど、その考える力を、結局、学校は知識として教えているんですよね。でも自然の中では違います。なんの道具もない状態で必要に迫られたとき、自分で使えそうなものを見つけてきて、代替品にしなければなりません。誰も教えなくても、自分でそういうこと考え、行なっていくうちに、だんだん考える力や応用力が身についていき、結果、生きる知恵が身につくと思うんです」

一番大工仕事にハマっているという三男が、リカさんの手を借りず、アドバイスも受けず、ひとりで作った椅子と机。知恵が満載!
実際、リカさんの子どもたちは、この山に来て、排便したとき、ティッシュがなかったことから柔らかそうな葉っぱを見つけて、少し揉んでからお尻を拭いていたのだとか。もちろん、リカさんが教えたわけではなく、自分たちで考えてやり始めたことでした。
また山を購入して初めてのゴールデンウィークには、リカさんは自らの手で竹を伐採して、子どもたちとともにキャンプをしながら流しそうめんを楽しんだと言います、そんなママの姿が子どもたちの目にどんなに頼もしく、輝いて映ったことか。子どもたちに生きる知恵を授けたことは想像に難くありません。
とはいえ、「最初はここまで大業なことに手を出すつもりはなかったんです」とリカさんは苦笑いします。
「初めは田舎に古民家を買って、ちょっときれいに直して、そこを子どもたちにとっての田舎にしようと思って、新潟や長野に古民家を探しに行っていたんです。ところがちょうどその頃に父が入院しまして、田舎の家を退院したあとの父の遊び場にもしてあげたいなと思うようになったんです。そうすると、東京暮らしの父にとっては遠い場所はちょっと難しいですし、実際、私たちも毎週通うのは大変だよなと思うようになって、近場の房総で探すようになったんです」

チェンソーが操れるようになると、ほんと何でも切れて便利なんですよ
房総は東京から車で約1時間。
ただし、近い反面、問題もありました。
「都心から近いので価格が高いんです。家付きの土地は私にはとうてい無理。じゃあ、土地を買ってキットのログハウスを建てようかなと思っていたときに、この山に出合って。道もないし、なんの手も加えられていない、誰も買わないような山だったので安かったんです」
道もない荒れた山……。ログハウスを建てる以前に、まずは木を伐採し、開拓しなければならない状態だったにもかかわらず、リカさんは、「それはもうなんとかなるだろうと思って買ってしまいました」とあっけらかんとした笑顔で語ります。
「近所の方から山の水が湧いて出ていて、他の家が使っていると聞いていましたし、山の中でも電気は引き込めるということも聞いていたので、ログハウスを建ててからの生活もなんとかなるかなとすごくアバウトに考えていました(笑)」
ヤフーオークションで購入したユンボ。
自ら軽トラを運転し、相模原まで引き取りに行ったそう。
こうして始まったリカさんの田舎暮らし大計画。
その第一歩は一般道から山へ入っていく道路作りから始まりました。
まずは、ヤフーオークションでチェンソーとユンボを購入。木を伐採し、地を固め、斜度の調整をし、U字溝を入れ……。
それらすべてをたまにお手伝いに来てくれるリカさんのお兄さん以外、業者の手も借りず、ひとりで行なったと言うのだから驚きます。
チェーンソーとユンボを操り、
自分の手で築いた山への進入路。
「もともとバイクのレースをやっていたくらいなので、かなり男っぽいんです。腕力にも自信ありますし(笑)。もちろん、すべて初めての経験でしたけど、やってみたらチェンソーで木を切ったり、ユンボを運転したりするのもかなり好きなほうで、私ってやっぱり普通の女性じゃないんだと(笑)。『女の仮面をかぶった男だ』と昔から言われていましたけど、つくづく自分でもそう感じました」
まるで山はリカさんの遊び場のよう。作業の過程を伝えるリカさんのブログにはイキイキ、ハツラツとしたリカさんと子どもたちの姿がたくさん残されています。 さらに開拓が進むにつれ、友だちや知人など、人が人を呼び、リカさんのもとにはさまざまな知識や技術を持った頼れる助っ人がお手伝いに来てくれるようになったといいます。そんな環境の中、造成に整地、基礎までプロに頼らず行なって、ログハウス作りに着手し始めたのは、山の手に入れてからちょうど1年が過ぎた頃でした。
「最初は、木を乾燥させないとログハウスを完成させられないと思っていたので、キットじゃなきゃダメだと思っていたんです。でも、今、山にある木を倒せばすぐにログハウスは組めるということを知人に教えていただいて、だったらせっかくこれだけの資源があるのだからということで、山の木を切って自分で建てることにしたんです。やり方は教えてくださる方々にも恵まれましたけど、自分でも本やネットでかなり勉強しました」

道路作りにも言えることですが、お金に糸目をつけなければ、いくらだって早く、簡単に、良いものが作れる方法はあります。でも、なるべく“あるもので”、“お金をかけずに”作るのがリカさんのこだわりでした。
たとえば、ログハウスの屋根材は、太い杉の木を1枚1枚スライスして使うというカナダやアメリカの昔からのやり方で、手間暇がかかって大変なのだそう。それでもリカさんは、「なるべく山のものを使うというのが私のやり方なので、2~3年かかっても、自分でやります」。
また、ログハウスに使うガラスは建て替えのために壊した民家からいただいてきたもの。「ガラスも買わずにすみそう」とはじける笑顔で語ります。







