一方で、玉木さんがこの公園を利用して、新たな取り組みをしたことで、変化をもたらせたこともあります。
「農業的手法で、自然を利用して管理していく方法です。今までみたいに草を刈って処分するのではなく、雑草も利用する。それには、農業的手法が一番合っているんです」
手始めに取り組んだのは、蕎麦の畑でした。その規模なんと、4000平米!
「4000平米の土地の草を刈って、ワイルドフラワーの管理をすると年間500万円くらいお金がかかります。しかも草は刈ってもまた生えるから毎年その繰り返しです。ところが蕎麦を植えると草が生えなくなるんです。さらに収穫という見返りもある。農業の手法を取り入れれば、最初にお金を投資しても、必ず収穫という形で返ってくるんです」

実際、12月には蕎麦の収穫祭を催し、試食会を開いたそうです。
「東京でこんなに広い面積で蕎麦を作っているところはほかにないということで、公園利用者が都民協働としてボランティアでソバ刈り、脱穀作業を手伝ってくださり、“江戸ソバリエ会”の人たちも、蕎麦畑に集まってくれるようになりまして、収穫祭にはその人達がボランティアで蕎麦を打ってくれました。無農薬有機肥料の最高の蕎麦でしたよ、250食ぐらい振舞いました。」
玉木さんが資格者として活動する環境再生医とは、対象となる環境の現状を診察(調査・診断)し、処方(対策の計画)をたて、治療(施術・施行)を施し、さらにその後のケア(維持管理)を継続的に行う環境分野の専門家のことです。しかし、玉木さんは一歩進んで、人間との関わりについても言及します。
「草を刈り、伐採し、間伐し、移植し、というように、山林を再生させたり、公園を造るだけが環境再生医の仕事ではありません。農業的手法のように、人間と自然が共生していくのが、循環の文化を守り、環境の再生と維持を長続きさせる秘訣だと思う。農業的手法は、実学主義ですので、広く皆さんに体験しながら学んでいただくこともできます。僕は、そういう視点で取り組むのも、環境再生医のひとつの仕事ではないかと思っているんです」
このような考えのもとに、玉木さんは新たな企画を次々と練っています。どれも玉木流のアイディアを詰め込んでいます。イベントとしてご来場いただいた方が参加でき、自然を学びつつ、自然との接し方を習得できるようになっています。たとえば、2月に開催計画中のもぐらの生態展示もその代表例です。「もぐらは“もぐら叩きゲーム”にもなっているように、悪の根源みたいに思われているけれど、本当は森の再生の一番の力となる功労者なんですね。それをみなさんにわかっていただくために、もぐらがどうやって穴の中を走り回るかを空中に金網トンネルを作って、見せるなどして、もぐらの生態を紹介したいと思っています。考えるモグラ - ぼくらも温暖化を知っている。」
さらに4月からは、この人工島で、米作りに挑みます。
「全国の稲の銘柄ベスト10を展示して、子供たちに種まきからやってもらい、秋の収穫の頃にはお客さんに味わってもらいたいと思っています」
自然との接し方を学んでほしいという玉木さんの願いは、自身が館長を務める熱帯植物館にも存分に活かされています。
夢の島公園内にある夢の島熱帯植物館は、新江東清掃工場のゴミ焼却場でつくられる高温水をエネルギーに、熱帯雨林の環境をモデルとして造った植物館です。「熱帯植物とわたしたちの生活との関わり」を広く紹介するために、ガラス張りの大温室にはさまざまな熱帯植物が生育し、植物が生み出すエキゾチックな風景や自然の不思議を楽しめます。さらに映像ホールや情報ギャラリー、イベントホールではさまざまな展示を通して、植物や熱帯についての知識を得ることができます。

「植物は地球の環境を作った元です。そして、その植物が最初に現われたのは赤道直下の熱帯でした。雨が降り、太陽光線が燦々と輝く蒸し暑い熱帯で、植物は爆発的に繁殖して、酸素を出して、環境を作った。そして、素敵な環境ができたときに、動物が現われた。その過程を知れば、環境を作った植物たちがいなくなってしまったら、人類も文明も滅んでしまうということがわかりますよね」

超高層ビル群や地下鉄の発達など、都市の進歩と発展のなかで、どんなに地球の環境を守るためには自然を大切にしなければいけないと訴えても、子供たちにはピンとこないのが実状かもしれません。しかし、熱帯の植物がすこやかに育つ姿と環境を目の当たりにし、植物が発する酸素が充満する中、新鮮な空気を吸って玉木さんの語る話を耳にすれば、植物がどれだけ人間が生きていくために重要な存在であるかは、すんなりと理解することができます。玉木さんは続けます。
「植物の名前をたくさん知らなくても構わないんです。ただ、こういうところでジャングルの疑似体験をして、植物に関心を持つことや、植物を大事にする心を養ってもらいたい。そのためにも僕も含め日本植物園協会に属している人たちはもっともっと頑張らないといけないと思っています」
玉木さんは小学校へ特別講師として講義に出かけることも多いそうですが、そんなとき、必ず子供たちにはこう言っているそうです。
「この中から1人でも2人でも偉い植物学者になって、地球のために闘ってくれよ!」










