
私は、もともと演劇に興味があって、舞台の演出家になりたかったんです。演出家になるためには、人の身体の動きがわかっていないとダメなんですね。心の中に起こった衝動と身体の動きとが、どういうふうに結びついているのか。それが不思議で、それを知りたいと、いろんなメソッドを勉強しました。
そのうちの一つに整体がありました。予備知識もなく講座に参加したのですが、これがおもしろくなって、どんどん勉強していったんです。そのときには、整体はあくまで演劇の仕事に役立てたいというつもりだったのですが、演出家として一流になるのはなかなか難しくて、そのうち両親は年老いてくるし、娘は大きくなる。そこで整体を職業にしようという決意をしたんです。幸いなことに整体の才能はあったんですね。
プロになってみると、それまでとは違う、深いところまで見えるようになってきました。整体を受けに来る人は、頭が痛いとか腰が痛いとか、いろんなことを訴えてきます。それぞれ訴える内容は違うんですけど、でも、結局は食べ物に行き着くんですよ。いろんな人の背骨を観察しているうちに、そのことに気づいたんです。
そこで、何十人ものクライアントに「実験をやっているから協力を」とお願いして、2週間単位で食事のデータを取らせてもらったんです。記録を提出してもらい、そこにチェックを入れていった。当時まだ知識は浅かったけれども、基本的な栄養学は学んでいたので、それにのっとって、食べないほうがいいものは赤、積極的に食べてほしいものは青でチェックするというやり方でした。
それをしばらく続けていると、私のアドバイスを厳密に守った人と、忙しかったとか手に入らなかったとか、いろんな理由で実践できなかった人との間に差が出てきたんです。守った度合いが高ければ良い身体の状態をキープしている。ところが守れなかった人はレベルダウンしてくる。
これは、やはり食べ物が身体に密接に関係しているのだと確信を持てたんです。それならば、もっと食べ物のことを真剣に勉強してみようと、本格的に栄養学の勉強を始めました。20年以上前のことです。
こうして学んだ知識に基づいて、クライアントに紹介できるような食事を出すレストランを探したんですが、当時、私がいいと思えるものを出しているレストランは一軒も無かった。先にも触れましたが、自然食とは名ばかりだったり、味がひどかったり、とにかくどうしようもなかった。これだったら自分でやるしかないと決意したのが、『キヨズキッチン』を開くきっかけになりました。とはいっても、レストランをやるためのノウハウも経験もまったくありませんから、決意してから開店まで8年ほどかかりましたけれどね。
演劇、整体、そして「食」と、一見ばらばらに見えるかもしれませんが、私にとっては全部が「真実の追求」なんです。ただ、最後の表現の形態が三つに分かれただけ。根本はすべて一緒で、追求していることは真実。それがボクのライフワークですから。それしかありません。
その後、05年にレストランは畳みましたが、いまは異なった立場から飲食業に携わって、「食」に関する活動の場を広げています。









