
相根さんが5年間を費やし立ち上げたのが、“天然住宅”のプロジェクトです。
「森林保護って言われていますけど、実際は山を守る手立てがないのが今の現実です。日本の林業は閉塞状態で、廃業が相次ぎ、山は荒れ放題。林山地で黒字のところは一カ所もありません。そんな状態だから、後継者がいるはずもなく、山で働いている人たちはどんどん高齢化しています。あと10年もすれば山の手入れをする人もいなくなり、林山地はダメになってしまいます。けれど、我々は都会だけで暮らせるわけではありません。おまけにその都会は化学物質を多用した毒の入っている家ばかりでやはりひどい状況になっている。それをなんとかリセットしたいというのがこのプロジェクトです」
山では7割くらいの建築部材を作り、そこに即戦力になりうる方法で、伝統工法の大工を育てます。そしてひとつの林山地に10社の工務店を作り、1社が年間10戸の住宅販売を目指します。そのグループを全国100カ所に作ります。技術提供や広報宣伝は、知識とノウハウを持った相根さんらが携わる「中間法人 天然住宅」が担います。
「そうすると、林業家や大工が増えます。そこでエコビレッジをつくり、畜産や有機農業をや加工業なども行えば、さらにさまざまな仕事が生まれ、住む人も増え、地方の活性化にもつながります。そしてそこから生まれた利益は山へ還元していく、そんな仕組みづくりを考えています」
林業や建築業だけでなく、他の産業ともリンクすることで地方も山も再生する。夢のような話と思えるかもしれませんが、実際、モデルケースとなるこんな例もあります。
岩手で盛んな山地酪農です。それを林業に応用しているのが京都府京丹波町です。
「荒れ放題の山に人が入れるようにするためには多額のお金がかかります。そこで山に牛を放つんです。牛は下草を食べて、枝払いもしてくれて、1年くらい放牧しておくと、間伐ができます。牛は無肥料無農薬の草を食べて、のびやかに育っているからおいしいミルクを出してくれて、飛ぶように売れているんですよ。牛はミルクを出したくなると自分で山から下りて来て、搾乳してもらうとまた山へ戻って行く。お産は人の手を借りず、牛舎に戻り自分で生む。手間がほとんどかからないんです。それでいて、林業や農業が成り立っている。天然住宅では、それと建築とを絡み合わせればと考えているんです」

さらにもうひとつ、鹿児島のこんな例も紹介してくれました。
「鹿児島では黒豚を利用しています。手のつけようのない竹林に黒豚を放つ。豚は竹の根っこを食べてくれるし、鼻で土を掘り起こすから、耕されて畑になるんです。そこに地元の農家が作っているものとはバッティングしない、ラディッシュだったりハーブだったり、農作物を栽培する。豚のおかげでぼろぼろになっていた山は生き返り、農業も成り立ち、さらに山の中では天然のものしか食べていないので食肉としても絶品で売れる。循環ができるんです」

相根さんは、「建築だけではなくて、まわりの技術ができてきたからこそ、私たちが目指そうとしていた天然住宅の構想が成り立つようになった」と微笑みます。
板橋区の愛工房の乾燥機もそのひとつです。
「住宅に使用する杉の木は、普通、半年から1年天日乾燥しなければならず、そのためには在庫に数千万円から億のお金が必要になります。でも愛工房が発明した機械なら、1日で杉の木を芯まで乾かすことができる。しかも温度は薬草の業界では秘密の温度と言われる45度のため、杉の薬効を全部活かしたまま乾燥させることができる。最近は時間を短縮するために高熱で乾かして中がスカスカ、ボロボロになってしまっている杉の木が多く使われているけれど、これなら丈夫ですから耐震も万全です」

さらに現在、相根さんが一般家庭に広く普及させたいと考えているのが地球環境に優しく、経済的な暖房器具・さいかい産業ペレットストーブです。
「日本の木材は柱を作ると回りが屑になってしまいます。木材の20~30%を使ってあとは山に捨てている。さいかい産業のペレットストーブは、そんな木材の端や木の皮、枝葉も燃料として使えます。ですから、木材は、住宅を作って、残りで家具を作り、その端材でおもちゃを作って、さらに残ったものをペレットとチップにすれば捨てずにすべてを使うことができます。昔、灯油が安い時代にペレットストーブは値段が3倍していて、壊れやすいこともあって普及しなかったのですが、さいかい産業製は、故障もほとんどないですし、効率も2倍以上高くなっています。日本のいろりとか火鉢を参考にして輻射熱まで活かすアイデアが生きていて、これを使うことによって、さらに山が生き返る。皆さんにもぜひ使ってほしいと思っています」
豊富なアイデアと積極的な取り組みで、山の再生への道を築き上げている相根さん。「山を守るためには、市民運動では限界があるんです。ビジネスで大きな規模でやるしか方法はない。天然住宅のプロジェクトで、年間1万軒新築を建てるネットワークに仕立て上げると、業界では3番手くらいになれます。そうなれば社会ももっと大きく動くはず。それを目標にしていけば、全国の森林が守れると思っています」と語ります。










