
かつて銀行だった本社ビル
「弊社の本社ビルは、37年前にできた銀行をリフォームして使っています。この町の人たちには、ここがかつて銀行だったという記憶がありますよね。そのビルが、このようなエコロジカルな建物に生まれ変わったということで、インパクトがあると思います。
古い建物は壊して、更地にして新しいビルを建てるのが一般的な活用の方法でしょう。
それを、手間をかけて原形を残しつつ再生しているということに、どこか潜在的にひっかかって来ると思うんです。ほっとするとか、よくぞ壊さなかったとか。再生ということですかね。
昔住んでいた町に行くと、ぜんぜん面影がなかったりしますよね。この町にいたという記憶がなくて、愛着が生まれない。記憶の継続みたいなものが、あまりにも短いサイクルで分断されるから心が荒む、みたいなことがあると思うんです。でも、あのタバコ屋がまだある、あの酒屋もあるというと、また来ようと思うじゃないですか。この本社ビルは、その可視化されたモデルですよね。

グリーンカーテンはメンテナンスも考慮して設計しています
本社の1階はガラス面が大きいので、直す前はすごく寒かったんです。窓って熱が逃げやすいんですよ。エアコンをつけても足元からしんしんと冷えてくる。そこで床暖房を入れることにしたんですが、床暖房の効果を上げるにはガラスをどうにかしないとエネルギー効率が最悪になる。そこで真空ガラスというのを使っています。普通のガラスは単板ガラス。ガラスを2枚サンドイッチにして、間に空気層が入っているのが複層ガラス。真空ガラスは、その間が真空なんです。
さらに窓の外をカズラで覆っています。日射というのは室内からはどうにもならないんですよ。だから、カズラで遮る。カズラの茎は中に水が通っているので、打ち水をしたときのような冷却効果もあるんです。また、緑があると見た目にも涼しげに感じられます。
屋上は緑化するとともに、太陽光発電と太陽熱温水器を設置しています。計画では、さらに小さな風力発電をつける予定です。7月にオープンしたんですけれど、エアコン1台、設定温度28度で大丈夫でした。冬は太陽熱温水器による床暖房だけで、エアコンはほとんど使わないで済むと思います。
それから、1階にちょっとした植栽を植えてベンチが置いてあって、道行く人たちのミニ公園のようになっている。駅前で買い物をしたおばあちゃんがこのベンチでちょっと休んでいってもいいじゃないですか、と。

外観に似合うおしゃれなベンチはちょっとした憩いの場に
屋上で植物を育てていると、社員が気にしてくれます。春先になると芽が出てきたり、チョウチョやミツバチが飛んできたり、四季が感じられるわけですよ。そういうことが日常的にあって、環境につながっていくんです。そういう体験と結びつかないと、左脳だけにCO2削減だとか環境を教えても実感がないですよね。こういうのも、社員に対する環境教育です。建築業の工場見学というと、建材メーカーや住宅設備の工場の見学に行くんですが、ウチは山に行って一次産業に触れる機会を作っている。自然素材って、そういうところからできてくるわけですからね」


