GREENER COMPANY - Vol.7 MERRY PROJECT 笑顔とメッセージに込められた一人ひとりのメリーな想いと、地球を大切に思う気持ちは、国境を越えてつながっていくと思います。

笑顔の力が世界を変える

これぞ、水谷流。笑顔を残す連写術
これぞ、水谷流。笑顔を残す連写術

そもそも“メリープロジェクト”を始めたきっかけは、米国旅行中にバスの中で偶然出会った少女たちの笑顔を撮ったこと。カメラを向けられても構えることなく、屈託なく笑う少女たちの写真には、前向きな幸福感があふれていました。この写真を『Merry』という写真集にまとめ、99年に刊行。翌年にはラフォーレ原宿で写真&ポスター展が開催されました。このとき、“あなたにとってメリーとはなんですか?”という問いとともに笑顔を撮るというコンセプトが生まれ、さらに2001年にはロンドンのセルフリッジ百貨店で『Merry-Tokyo Life』、ラフォーレ原宿で『Merry-London Life』を同時開催。その後、阪神淡路大震災後の神戸、同時多発テロ後のニューヨーク、そして東京、札幌、愛知万博などで“メリープロジェクト”を展開してきました。
その中で水谷さんが気づいたのが、笑顔の持つ力です。

MERRY PROJECTの全てが分かるBOOKを持って。
MERRY PROJECTの全てが分かるBOOKを持って。

「愛知万博に向けて、中国の奥地で笑顔の撮影をしたことがありました。おじいさんとおばあさんと子どもしかいないような村なんですが、政府の関係者がついてきて、この人は撮っていいとか、この人はダメとか言う。服装が汚いとか、そういう理由です。国家の恥は見せたくないということでしょう。
一緒に行った代理店の人やコーディネーターも、“ダメといっていることをやっちゃうと、また日本人が問題を起こしたということになるから、止めてください”と言いました。でもボクは“本人がいいと言っているんだから、いいじゃん”と撮影しているうちに、オレもやるオレもやると、村中が笑いの渦になっていったんです。おじいさんもおばあさんも子どもたちも、笑っているわけですよ。そうすると、それまでかたくなにダメだダメだといっていた政府の関係者が、“スマイル・イズ・ビューティフル”と。

現実のリアルな部分は見せたくないという立場の人が、村人の笑顔のパワーに押されちゃった。“夜は一緒にご飯を食べよう、スマイル・イズ・ビューティフルについて語ろう”とね。北京五輪のときもそうです。法律の壁など難しい問題もあったんですが、笑顔の力で変えられたんです」。

笑顔は震災から復興途中だった神戸でも力を発揮しました。
「笑顔の撮影をひまわり畑で行なって、神戸市と一緒に、神戸の駅とか、いろんな場所にその笑顔のポスターを貼っていったんです。するとやはり反応が出てくる。新長田の復興工事の現場に貼ると、現場が笑顔に変わっていくわけです。冷麺屋のオモニに、“私の知っている人はみんな死んじゃったけれど、笑顔を見るとすごく元気づけられる。どうもありがとう”と言われたりしました。

あ、いいことをした、デザインってこんないいことができるんだって感じました。痛みを感じている人を笑顔にする、幸せにすることが、ほんとうのデザインなんじゃないかなと、そこでわかったんです。それでおカネを儲けるとか賞を取ることじゃなくて、人をメリーにすることが究極のデザインなんだな、と」。

笑顔の前でのトークはやっぱり笑顔になる
笑顔の前でのトークはやっぱり笑顔になる

神戸での“メリープロジェクト”のオープニングは2001年9月13日。水谷さんはその二日前、9月11日に神戸入りしました。その日、ホテルでテレビのスイッチを入れた途端、目に飛び込んできたのがニューヨークの貿易センタービルに旅客機が突入する衝撃的な映像。アメリカ同時多発テロ事件が発生したのです。

「13日のオープニングパーティで、あるジャーナリストの方から“神戸の次はぜひニューヨークで”と言われました。それで、ニューヨークでやることにしたんです。クライアントがいるわけでもないので、全部自分のおカネで行って、悲しみの残るニューヨークの人々の笑顔の取材を行ない、その後、ニューヨークと東京とをインターネット上で結んで、笑顔の交換をするというイベントもやりました。
ニューヨークの人たちは、“私はビルの上から人が落ちてくるのも見ていた。アメリカ人がやるべきことを日本人のあなたがやってくれているのは、たいへんな喜びだ”と、とても喜んでくれました」。

愛知万博、北京五輪など世界的なビッグ・イベントで、笑顔の力を発信してきた水谷さん。次の目標はどこにおいているのでしょうか。

MAERRYオリジナルプランターで、野菜もすくすく成長中。
MAERRYオリジナルプランターで、野菜もすくすく成長中。

「愛知万博、北京五輪に匹敵するものというと、上海万博ですかネェ。ただ、ひとつのイベントというよりも、“メリープロジェクト”はいま点の活動なんだけど、面の活動、世界的な笑顔の活動になってほしいなって思っているんですよ。ボク個人のアート活動のようなことじゃなくて、ボクから外れたところで、笑顔の地球になるような活動になること。みんなが笑顔になる、みんながメリーになる。そういう活動が若い人たちに引き継がれていくといいなと思うんです。

環境のことだって、一人ひとりが地球に対してメリーな気持ちになっていけば、一人ひとりが少しでも電気を消せば、一人ひとりが緑を植えていけば、なんとかなるんじゃないですか。ボクが世界を回って、キューバの子どもたちなんかを見る限り、子どもたちのほうが、そういうことに対して敏感でした。それが教育の中で行き届くようになっていけば、彼らが大人になった頃には意識の高いエコ活動につながると思うんですけどね。
ゴミ拾いと一緒ですよ。いくら拾っていっても、捨てる人がいたのではキリがない。そういう意味での空気づくり、笑顔の空気づくりというのが大事かなと思います。
エコを応援するというのはそういうことかなって思います。世界を回って、ボクはそう思いました。だから、意外と簡単だし、意外と難しいと思ったりするんだけど。

それはやっぱり、人間の心、愛、気持ち、そこにつきるんじゃないかな。そこをどう育てるか、つくっていくか。それはやっぱり笑顔から始まって、そして笑顔に終わるんじゃないかな。笑顔が大事かなって思うんです。笑顔って、シンプルだから難しいんですけど。
笑顔こそがすべて。笑顔が地球を救う。笑顔の力で地球を救おう。そういうことじゃないでしょうか」。

2009年夏は、MERRY IN ASIAです。

  1. 「中国四川大地震」MERRY in Sichuan 2009年6月7日~13日
  2. 「スマトラ島沖地震」MERRY in Sumatera 2009年6月17日~24日
  3. 「阪神淡路大震災」MERRY in KOBE 2009年7月