水谷さんは、メリーガーデンの活動を「楽しくなければ、そして笑顔がなければエコじゃない、ロハスじゃない」という考え方で行なっているといいます。「難しいことは抜きにして、農業にしても、楽しく、笑顔になれる農業を目指しています。学んで、つながって、育てて、食べて、そしてほんとうにみんなが笑顔いっぱいになる。そういうことを農業の基本にするということです。

事務所の入り口には農林10号の樽が…
農業というのは、いままでデザイナーが入らずにやっていたんだけど、農業とかエコっていうのは、ヘタな現代美術やヘタなデザインより数倍アートだなって思います。自然が作る造形美、予期せぬ美しさというのには、ほんとうに感動できます。たとえば、麦1本でもインテリアになっちゃう。
この麦は農林10号というんですが、背が低くくて風にも倒れにくいという性質を持っています。これがメキシコの麦と交配されて、メキシコからインド、パキスタン、世界各国で栽培されるようになった。これが麦の生産量を増やし食糧危機を救ったということで“緑の革命”と呼ばれ、開発者のボーログ博士がノーベル平和賞を受賞しているんです。

MERRY GARDEN。都会のど真ん中ということを忘れてしまう風景。
つまり、緑というのは平和活動にもつながる。メリーな活動にもつながる。農業って、ヘタなアートよりアートだし、ヘタなことをするよりもメリーになれる。農業は次の時代を作っていくものだと思うし、ヘタなデザインより、ぜんぜんおもしろい。ウチの事務所なんか、午前中は農作業ですよ(笑い)。
楽しい農業、楽しいエコ活動=楽しい笑顔活動みたいなことを、やっていけたらいいなと思っています。メリープロジェクトの基本は笑顔。笑顔に結び付けた農業であり森づくりであり、クリーンアップ活動なんです」。

記憶に残る、世界中のクリーンアップ…
クリーンアップ活動も、“メリープロジェクト”の一環です。
「クリーンアップ活動も、ゴミを拾うことだけに意味があるのではなくて、ゴミを捨てない、笑顔の街づくりをしたいということです。拾っている人の姿を見て、“ゴミを捨てない”って言ってくれること。それがメリープロジェクトのクリーンアップ活動です。つねに笑顔の街づくり、笑顔の空気づくりということなんです。ゴミを拾うとき、ただ黙々と拾うのではなく、笑顔いっぱいで、みんなお揃いのTシャツを着てアピールする。人がいない真夜中に密かにやったりせず、あえて人のいちばん多いときに渋谷の真ん中でやったりとか、おおいに見せよう、と。それによってゴミを捨てない町の空気を作るということです」。
水谷さんは、世界各地で“メリープロジェクト”を展開する中で、街、撮影地でのクリーンアップ活動も実践していきました。
キューバでは、こんなことがあったと言います。
「ボクたちはチェとカストロが勝利宣言をしたテラスで、子どもたちの笑顔を撮ったんです。いまは革命記念館になっているんですが、そこで写真を撮って、“じゃあね”ってお別れしたあと、一人で周辺のゴミ拾いをしていたんですよ。ボクは、世界中どこに行っても、撮影後にはゴミ拾いをやっていたんです。革命記念館もけっこうゴミだらけなんですよ。そうしたら、いまさっき撮影した子どもたちが戻ってきた。“ボクたちもゴミ拾いをやる”って。バッグからゴミ袋を出すと、みんなが競い合ってゴミを拾ってくれたんです。やってくれって頼んだわけじゃないんですよ。感動しました。メリープロジェクトが、この子たちとひとつになれた感じでした。オーストラリアのアボリジニの子どもたちを撮ったときも、同じことがありました」。
キューバの後には南アフリカを訪問しました。
「アフリカには、ゴミは捨てれば土に還るという考え方がある。ゴミ箱に入れるという考え方がないんです。でも、いまのゴミはプラスチックだから土に還らないんですよね。だから、ピラミッドの周りもペットボトルやビニール袋などのゴミでいっぱいなんですよ。そこで、アフリカのある国の大統領が、“子どもたちに、小学校の授業で拾わせなさい”と命じたというんです。そうしたら、国からゴミがなくなった。子どもが拾っているから、親は捨てられないですよね。つまり、拾うことばかりやっているのではなくて、捨てないということが大事だと思うんです。環境をよくするってそういうことかなって思うんです」。

旅のお供。なくてはならないCONTAXのカメラ。
南アフリカの次に訪問したケニアでは、“メリープロジェクト”の方向性を決定づけるような、ある少女との出会いがあったといいます。
「ナイロビのスラム街の女の子が、“あなたのメリーは?”という問いに、“you”って書いてくれたんです。どういうこと?って聞くと、“私はいままで生きていくのにせいいっぱいで、笑ったこともなければメリーなんて考えたこともなかった。でも、今日はあなたに会えたからメリーよ、私にとってのメリーはあなたよ”って言ってくれた。
それまで、ボクは広告とかデザインをやっていて、そういうリアルな喜びはあまりなかった。こんな賞を取ったとか、こんなにモノが売れたといっても、その感動にはとうてい及びませんでした」。



