- 四戸 靖郷(しのえやすお)
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NPO法人自然環境復元協会 理事 事務局長
国際教育スポーツ文化財団・日本 副理事長
西24自治会 会長
自然環境復元協会は、東京に本部事務局をおく特定非営利活動法人。日本全国に約700名の会員と、「環境再生医」の資格認定者2400名などを通じて、自然環境の復元・再生に取り組んでいます。この会が目指す、未来に引き継ぐべき持続可能な共生社会の姿とは。四戸靖郷事務局長にお話を伺いました。
当協会は、1989年に設立された自然環境復元研究会が前身。研究会と名がついているとおり、当初は学者さんたちの集まりでした。学者さんといっても、生物学者、生態学者、土木工学、社会工学、人文科学など、さまざまな分野の人たちが、横断型で集まったんです。20年近くも前にそういうことがあったのかと皆さん驚かれるんですが、それくらい先駆性のある試みでした。
当時、高度経済成長の破綻があちこちで見られました。田んぼがダメになっていく、河川が汚れていく。損なわれていく自然環境をこのまましておけない、なんとかしなければということでシンポジウムが開かれた。そのなかで、これからの環境を考えるには、専門分野の人たちだけが集まってもダメだろうという考え方が出てきたんです。
環境というのは社会を抜きに語れません。自然には、そこに暮らす人たちが絡んでいます。そこには歴史や文化や生活があります。子どもたちの学びの場でもあります。それを単に物理現象だけで捉えることはできない。社会的な側面が大事になってきます。
例えば、川の魚が減ったという問題があるとする。川のこちら側はxx市で向こう岸は○○市で、河川敷は農地になっていて、川自体は国土交通省が管理していて、さらにそこに漁業権が絡んでいたりする。これをなんとかしましょうということになったら、多くの人たちの合意形成が必要です。地方公共団体や行政への働きかけも必要でしょうし、もちろん魚の専門家も要る。農地に関しては農業の専門家が要るし、土木工事を伴う場合には、その専門家も要る。いろんな人たちが結束しなければ、一つの環境でさえ、なんともならないんです。自然環境を元に戻していくという活動は、たいへんな作業なんですよ。
そういう趣旨でシンポジウムを繰り返したり、あちこち回ったりしているうちに「そうだ、そうだ」ということで賛同者が集まってきて、専門家だけの小規模な集まりから、市民を巻き込んだ大規模な組織に拡大していきました。この間、10年間で31回の全国シンポジウムを開催しています。そして、1999年に特定非営利活動促進法ができ、これはちょうどいいということで、翌年に研究会からNPO法人自然環境復元協会に移行したわけです。発端から現在に至るまで、約20年かかっているということです。
現在、会員は700名ほどいますが、いろんな専門分野の方がいて、すごい広がりがあるんです。理事が32名もいますが、これも多分野にわたる人が必要なので、それだけの人数になっているわけですね。森林、農業、生物、河川・湖沼、海、あらゆる人がいます。みんなボランティアですよ。

カエルにも触れあう。
協会の具体的な活動としては、まず社会啓発、政策提言ですね。全国各地でシンポジウムを開催して、自然環境の復元という、われわれの理念を発信していく。また、「環境再生医」という資格制度を制定していまして、そのネットワークを通じた情報発信も行なっています。環境再生医については後ほど詳しく触れます。
環境再生医は、教育・研修事業にも能力を発揮します。全国の環境再生医が「環境再生医の会」という自主的な組織を作っていまして、ここが各種セミナーやワークショップ、自然体験学習、委託研修などを全国で実施しています。さらに認定校制度などによって明日の指導者の育成にも取り組んでいます。
千葉では、市から借りた農地を開墾して、子どもたちに田植えや稲刈りの体験をさせたりしています。田んぼに触れたこともなかった子どもたちが、初めて自然に触れて、田んぼって気持ちいいな、と。最初はぜったいビックリするんですけどね(笑)。そのあと、みんなで一緒にお昼を食べたり、生き物のプロフェッショナルもいるので、その人がカエルを捕まえてきてみんなで触ったり、ヘビを捕まえてきて子どもの首に巻いたりとか。子どもたちの顔、ちょっと引きつってますけど(笑)。そういったことを地域の人たちと一緒になってやっています。そういう体験をさせてあげながら、この地を生かすことを県や市に提言していく。そういう活動もしています。

住民ボランティアによって維持・管理されている「サンシティの森」(東京都板橋区)
それからもちろん、環境保全・再生事業があります。河川などの再生や整備、農村や里山、棚田の再生、市街地のビオトープ作りなどを実践しています。
これは板橋区(東京)の団地の例です。団地の真ん中に森がぽつんとあって、かなりの面積を占めているんですね。この森に関しては、団地の企画、設計の段階から環境再生医が関わっています。さらに、ここの住民の中にも環境再生医がいまして、普段の維持管理は、その二人の連携で、さまざまな交渉などをしながら行なっています。この森ではいろんなイベントも行なわれています。ハイキングコースになっていますし、シイタケも作っている。そういうふうに、みんなで楽しむ森、都市の中の森として自然との共生に取り組んでいるんです。

静岡市内にある谷津山を憩いの場として活用。
それからこれは静岡市内の例なんですが、市の中心部にぽつんと取り残された山がある。そのほとんどが竹林なんです。それを落葉樹、広葉樹を入れたりして、もっと彩りのある、市民が憩えるような山にしよう、と。土地自体は民有地で、いろんな地権者の方がいるので、そういう人たちを回ってハンコを押してもらいながら、それから県とか市の担当者と交渉しながら、ここが市民の憩いの場として活用できるようにしていく。そういった活動をやっています。

田植時期には沢山の人が集まる。
同じく静岡県の松崎町では、12年ほど前から棚田の復元に取り組んでいます。完全に放棄されていたんですが、生えていた雑木を抜き、崩れた石組みを積みなおして、一段一段作っていって、戦前には20haあった棚田が、いま2haだけ戻っています。ここではオーナー制度を作って、全国からオーナーを募っていましたが、いまやオーナーさんが百何十人にも増えちゃって、これ以上は増やせないというところまで来ています。

発表の場としての学会やシンポジウムも
事務局が運営する。
もう一つ、01年に設立された自然環境復元学会も、われわれ協会の活動の一環です。これは環境に関する学術研究を行なう場。ここで大学生、大学院生など若手研究者たちが交流、発信できるようにし、将来の指導者を育成していこうということです。いまは協会の組織の一部なんですが、将来は分離独立させて、相互に補完・協力しあう関係を構築していきたいと考えています。



